「さっきも言ったのに…」そう思う回数が増えれば増えるほど、認知機能が低下している人の家族はつい、イライラしてしまいがち。

そうなってしまうのは、きっとその人が元気だった頃の姿をよく知っているから。

自分にとって、かけがえのない大切な存在だからなんですよね。

今回は、これから認知症あるいは認知機能が低下ぎみの高齢者と同居を考えている方に向けて、実際どうなのか、私(孫)の体験談をお伝えします。

認知機能が低下するということ

まずは、認知機能が低下するとは、具体的にどんな症状が出てくるのか紹介します。

私の祖母の場合、以下の症状が強く見られました。

もともと、強いストレスがかかると物忘れが激しくなりやすかったのですが、脳梗塞を発症したあとは短期記憶の低下が著しく見られました。

  • 何秒か前に起きたこと、言ったことを覚えていない(短期記憶)
  • 新しいことを覚えるのが難しくなる
  • 何をするにも億劫になる

※こちらはあくまで一例にすぎません。認知機能低下には個人差がありますので、参考程度にしていただけますと幸いです。

例えば、何かしら病気を発症し、医師や看護師などから「短期記憶」について指摘された場合は、先ほどお伝えしたような症状がみられるかもしれません。

認知機能が低下ぎみの高齢者との同居はココが大変

認知機能が低下ぎみの高齢者との同居を考えるとき、同居予定者が一番知っておきたいと思うのが「同居を考えている高齢者の状態」ですよね。

私の祖母は、脳梗塞発症後、リハビリ回復期の病院の医師から「認知症かと思われます」と診断を受けました。

ただ、認知症とひと言でいっても、症状や進行具合は人それぞれです。

私の祖母の場合は、要介護2で昔のことはよく覚えているけれどつい最近のことは忘れてしまうことが多くあります。

その点を踏まえて、同居する中で大変だなと日々感じている点を紹介します。

大変さを理解してもらえない

認知機能が低下すると、どうしても今まで通りのコミュニケーションではうまくいかないことが増えてきます。

ただ、これは正直なところ、同居してみないと分からない部分です。

要介護度が高い方(要介護4,5)なら、誰がみても「大変だね」となるんです。

でも、要介護度が低いと長く一緒にいてみないと分からないところが本音。

ほんの10分、15分くらいであれば本当に元気なおばあちゃん、おじいちゃんに見えるからです。

受け答えもしっかりしていて、物忘れがあってもバレない程度に取り繕うのでその場をうまく乗り切れるんです。

別居していてたまにしか会わない家族、近所の人からは「元気そうなのに、本当に認知症なの」と思われてしまうことも実際にあります。

相談しても「考えすぎ」「高齢になるとそんなもん」と真剣に問題に向き合ってもらえない、同居している家族からすると辛いことも出てきます。

自分の体力と心に余裕がある場合は、「一緒に24時間いないから仕方ない」となりますが、家事や仕事、育児などでいっぱいいっぱいになっていると何もかも投げ出したくなる気持ちになってしまうんですよね。

何度も同じことを聞いてくる

これは認知症の方にはよくあることらしいのですが、短期記憶が弱くなると何度も同じことを聞かれるようになります。

例えば、「〇月×日は病院に行く日だよ」と言っても、5秒後には「いつだったかね。何日に行くんだっけ。」と言う具合です。

心に余裕がある日は優しく対応できますが、同居となるともちろん忙しくて穏やかになれない日もあります。

ただ、相手も悪気があって聞き返してくるわけではないのでできれば丁寧に対応したい部分なんですが…。

私の場合は、小さな子ども3人の世話もあったので、自室にカレンダーを置いて都度、書き込みながら予定の説明をする形で乗り切っています。

「病気だから」「高齢だから」とどこかで割り切ってしまえば楽になるのかもしれませんが、仕事として介護しているわけではなく、同居している家族なわけなのでそううまくはいきません。

こだわりが強くなる

高齢者になると、こだわりが強くなるというのはよく聞く話。

年齢のせいにできるものであればいいですが、認知症の症状として強く出ることもあるみたいです。

具合的には、こだわりが強いせいで周りへの配慮(忙しいかどうかなど)抜きで自分の意見を通そうとしたり、違ったことでも考えを曲げなかったりということがあります。

例えば、デイサービスに持っていく用の歯ブラシが汚れて変色していたとします。

私:「歯ブラシが汚れてきたから新しいのに替えようね」

と言うと、

祖母:「初めからこの色だった」

と言い返されます。そのあと、

私:「新品はブラシ部分は白かったよ」

と言うと、

祖母:「いや初めからこの色のものを買ってきたじゃない」

と言われるのです。

これも個人差があるかとは思いますが、自分が一度思ったことで世界が回っているかのように感じ取れる言動が増えてきます。

私の祖母は、もともと「べき思考」で自分の価値観や考えの押し付けが元気なときから強めでした。

だからこそ、認知機能が低下したことでこだわりが一層強くなったとも考えられます。

生活が制限される

認知機能が低下した高齢者の場合、家電の使い方を教えてもすぐに忘れてしまいます。

なので、同居を考えている人は書き方が悪いですが、かなり生活が制限されると思っていたほうがいいですね。

ショートステイやデイサービスなど、要支援や要介護といった介護認定を受けると福祉サービスが受けられます。

ただ、私の祖母が利用しているサービスにはなりますが、迎えや送りのときは家族が在宅していた方がいいようです。

出かける時も帰宅時間を気にしなければいけないので、どこか常に焦燥感にかられるのは意外とストレスです。

特に、がんじがらめの生活が苦手な方にとっては大きなストレスになると思います。

認知機能低下の高齢者との同居は慎重に

認知機能が低下すると、どうしても今まで通りのコミュニケーションではうまくいかないことが増えてきます。

ただ、これは同居してみないと分からない部分です。

同居してみてうまくいかなかったらそのとき考えるというのも一つの手ではあります。

認知機能の高齢者との同居は慎重に考えることをおすすめします。